【読書メモ】発想法(渡部昇一著)
この本は単に発想法のフレームワークを紹介するだけのようなものではなく、リソースフルな人間、発想の優れた人物を取り上げ、その人たちに共通する部分を渡部氏の視点から書かれた本です。よくあるテクニック集的なものではなく、どうすれば発想の豊かな人間になれるかという根本的な内容であり、生き方指南の本でもあります。
発想が泉のごとく湧いてくる『リソースフルな人間』になるには?
智謀湧如(ちぼうわくがごとし)。かつて秋山真之中将の銅像が建てられた際、同じく日露戦争で大活躍をした東郷平八郎が彼を評して書いた言葉だと言われている。
戦争などの極限の状態では、どんな困難な状況であってもアイデアが泉のごとく湧いてくるようなリソースフルな人間でなくてはならない。
戦争のような極限状態だけでなく、平時においても「智謀湧如」と評されるようなリソースフルな人間になるにはどうしたらいいかが本書には書かれている。
要点のみ、かいつまんで説明しよう。
●発想の井戸を掘ること
アイデア、発想を井戸の水に例えると、水をからさないためには、井戸を何本もほっておくことが必要。
井戸が2本あれば、アイデアの組み合わせが4通り、3本あれば15通りにもなる。
秋山真之は、ヨーロッパ海軍についての研究だけでなく、日本の昔からの水軍についても徹底的に研究をしたそうだ。
豊かな発想は、いくつものパターンによる組み合わせであるので、自分の専門や研究の井戸が一つしかないのは危ない。
夏目漱石の場合は、発想の井戸が2つあった。それは、漢学と英文学だった。
逆に私小説家と言われる人たちは、発想の井戸が一つしかないためにすぐに井戸が枯れてしまった。涸れた上にまだなお井戸をくみ上げようとして、最後にはノイローゼになったり自殺したりする人が多い。
補足:たしか、昔読んだ大前研一氏の著書に、これからのビジネスマンはI型、T型よりもπ型を目指すべきといった事を書いていたと思う。
I型とは一つの専門分野に特化すること
T型とは、一つの専門分野と幅広い能力・知識(ゼネラリスト的な能力)
π型とは、横の棒がゼネラリスト的な能力を表し、縦の二本の棒は自分の2つの専門分野を表す。
確かそんな内容だったと思う。
上記の発想の井戸を増やすということと本質は同じだ。
●手入れをして怠らないことである。自分の体験を磨く
自分の体験も発想の源泉となる。
不幸な体験こそ大切にすること。
なんてことのない幼児体験も、貴重な宝物のごとく大切にし、手入れをして怠らないことである。
つまらない平凡な幼少体験でも、それが起こった環境や時代、場所は今と変わっていることあ多いはず。だから、そうした幼少期の体験を捨て去らず、慈しむように、時々思い出すことだ。
補足:自分ではなんてことはい平凡な出来事、体験であっても、他人からすると貴重な情報や知識となることもある。
だから先入観で自分には何も誇れるものがないなど卑下する必要もないのだ。
●語学を利用する
外国語の文献を扱う人のほうが、そうでない人よりもリソースフルである。
●自信を身に付ける
発想の泉から次から次へとアイデアを湧かせる場合には、最初の泉が自信という水脈に達するまでの深さを持たなければならない。
とくに学者の場合は、専門については厳しい批判をしようと、待ち受けている人がいっぱいいることを予想しなければならないのだから、自信を持つところまで究めたものがないと、決してアイデアがコンコンと湧いてくるということはないのである。
●カンを養う
●異質の目を持つ
使わない井戸は涸れる。
知識や情報のエントロピーを増大させないこと。
何かを書くとき、知識や情報の蓄積が大きくなれば、立派な作品ができるのか?といえばそんなことはなく、表現しなければ本当に理解したとはいえず、知識があるといってもそれは断片の集合であって、エントロピーの大きい状態である。
エントロピーが増大した情報や知識は、それをまとめることができるのは天才だけである。
自分自身の悲劇、体験は、一にも早く忘れてしまって明日に向かて進もうというのは、生き方の知恵であるが、自分の悲劇的な体験を忘れることなく、心の中で交易する精神力があれば、それは異質な目になりうる。
小説家はその意味で不愉快で切実な体験をしっかりと持ち続ける能力のある人間という定義の仕方もできる。
最後に
いかがでしたか?
発想法と聞いて、何か簡単にアイデアが湧いてくるようなフレームワーク的なものを期待されていたら期待外れになるかもしれませんが、発想法というよりも発想豊かな人間になるということに重点が置かれているこの本、私にとっては非常に参考になりました。
もし詳しい内容を知って、発想が泉のごとく湧いてくる「智謀湧如」と言われるような人物になりたいのなら、ご購読をおススメ致します。
↓ ↓ ↓
発想法 渡部昇一著
単行本(ソフトカバー): 256ページ
出版社: PHP研究所 (2008/5/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4569699022
ISBN-13: 978-4569699028
発売日: 2008/5/20