【書籍要約】売れる企画はマイクロヒット戦略で考えなさい

【書籍要約】売れる企画はマイクロヒット戦略で考えなさい
廣瀬知砂子著  かんき出版

本書は、女性潮流研究所の代表である著者が、大手化粧品会社の実務と研究によって編み出したマイクロヒット戦略のメソッドについて語られている。

著者曰く「確実に売れるところを狙えば、知名度のない小さい会社にも、宣伝予算のない新商品にもチャンスがあるのです。」
と語っている。

著者が独自の手法を編み出す過程で、予算がない状況でも
明確なコンセプトを持った「商品力」
ターゲットを絞り込んだ「訴求力」
この2つを兼ね備えた商品は、成功確率が高くなることが分かった。

この2つの力を持った商品を作るための技術がマイクロヒット戦略である。

この本で学べることは
マイクロヒット戦略について
今までになかった商品コンセプトの作り方
絞り込んだターゲットの設定方法
ヒットとブームの起こし方

などが学べる。

開発費や広告費はないけど、ヒット商品を作りたいと願うビジネスパーソン、マーケッター、経営者にとって非常に役に立つ書籍だ。

特に商品の企画開発に携わる人におすすめ。

内容

マイクロヒット戦略とは?

ターゲットとコンセプトをマイクロ化することで、
確実に売れるところを狙う方法。

商品力…商品コンセプトのマイクロ化
訴求力…ターゲットのマイクロ化

マイクロヒット戦略とニッチ戦略、ブルーオーシャン戦略との違い
●ニッチ戦略…限られたジャンルでマニア魂を満足させる商品で勝負
●ブルーオーシャン戦略…新しいジャンルで新しい価値を提供する商品で勝負
●マイクロヒット戦略…おなじみのジャンルで新しい気分を味わえる商品で勝負

はじめてコンセプトの作り方

7つの切り口
1.世の中になかったはじめての商品
2.XXXXに代わるはじめての商品
3.XXXXの不満を解消したはじめての商品
4.XXXXできるはじめての商品
5.XXXXしながらできるはじめての商品
6.XXXXにお墨付きのはじめての商品
7.XXXXから上陸したはじめての商品

この中で、マイクロヒット戦略に使えるのは

3.XXXXの不満を解消したはじめての商品
4.XXXXできるはじめての商品
5.XXXXしながらできるはじめての商品
の3つ

心のキャラ設定

ある調査によると、若い女性はひとり3~5個のキャラクターを使い分けているというデータがあるそうだ。

また、同じ人でも時代や経済環境、人生のステージが変わると、使い分けるキャラクターも変わってくる。

人はその時々の状況や願望によって、自分の外見や言動を変えるもの。
人が内心で抱く「こうなりたい」「こう思われたい」という願望の自分像を「心のキャラ」と本書では名づけている。

ちなみに男性にも心のキャラは存在する。

女性誌はココロのキャラを見抜くためのメディア
女性誌は流行そのものではなく、流行になる以前の、まだ世の中に形として表れていない気分
つまり心のキャラが反映されているメディア。

逆に男性誌はスペック重視。
男性誌、ビジネス誌ほかマスメディアは情報を発信する際に根拠となるデータを求める。
世の中の流行をとらえてから記事にしているので、メディアに掲載された時点ですぐに情報が古くなってしまう。

ターゲットを絞り込むための2つのポイント

1.ターゲットの世代の消費志向が「背伸び」か「身の丈」か
2.ターゲットの流行感度が「トレンド系(新しい物好き)」か「フォロー系(評判のいいもの好き)」か

消費志向について

商品企画を行う場合、ターゲットの世代特性をすることが大切。
マイクロヒット戦略では、大きく「背伸び消費」と「身の丈消費」の2つに世代特性を分類している。

背伸び消費とは、他人に生活レベルを高く見せることに価値を感じる消費志向
身の丈消費とは、堅実で等身大出ることに満足する消費志向

背伸び消費の世代
1947年~1949年生まれ…団塊の世代
1965年~1969年生まれ…ぎらぎら・バブル世代
1977年~1981年生まれ…キラキラ・ギャル世代

身の丈消費の世代
●昭和一ケタ後半~1946年生まれ…焼け跡世代
●1970年~1976年生まれ…団塊ジュニア世代

さらにこれらの大別した2つの層と中間層が存在する。
この中間層の特長は、場合によって身の丈消費になったり、
背伸び消費になったりする柔軟性を持っている。

中間層
1961年~1970年生まれ…新人類世代
1987年~1992年生まれ…友達同調世代

ターゲットの流行感度「トレンド系」「フォロー系」について

マイクロヒット戦略では、イノベーター理論でいうところの
イノベーターとアーリーアダプターを合わせた層をトレンド層とし、
アーリーマジョリティの層をフォロー層と定義している。

ちなみにイノベーター理論では、消費者を5つに分類している
イノベーター 割合:全体の2.5% 特長:新しいものを進んで採用する
アーリーアダプター 全体の13.5% 特長:流行に敏感
アーリーマジョリティ 全体の34% 特長:平均より早く新しいものを取り入れる
レイトマジョリティ 全体の34% 特長:周りの多くが使っているのを見てから、同じ選択をする
ラガード 全体の16% 特長:保守的で伝統的。トレンドや世の中の動きに関心が低い

レイトマジョリティ以下の層はマイクロトレンド戦略では扱わない

理由:レイトマジョリティはすでに人気や評価が定まった商品に対してであっても全く知らない可能性が価格、
アーリーアダプター層よりもさらに慎重さ消費スタイルなので商品の魅力だけ絵主観を変えさせることか不可能。

企画当初からこのレイトマジョリティまで取り込もうとすると、この人たちにもわかりやすい商品を作らなくてはならないので、
初めてコンセプトのような新しさを感じさせるマイクロヒット戦略は使えない。

トレンド系フォロワー系ではそれぞれの層に向けた商品・サービスは
品質パッケージの方向性が大きく異なる。

トレンド系…本物系商品
フォロワー系…なんちゃって系商品

トレンド系に属する人は本物が分かり本物にこだわりたい人たち。
特長としては、日頃情報収集して自分なりに分析していて、自分が気に入ったら入手困難な商品でもわざわざ遠くに行って商品を購入したりする。

一方フォロー系は本物の存在を知らない、もしくは本物を知っているが必ずしも本物じゃなくてもいいと考えている。

心のキャラを分類する2軸マトリックス

縦軸に 価格志向(高価格志向⇔低価格志向)
横軸に 消費傾向(背伸び消費⇔身の丈消費)
をとると、大まかに4つに分割される。

1.背伸び消費で高価格志向 …ブランド志向
2.身の丈消費で高価格志向 …品質志向
3.背伸び消費で低価格指向 …若者志向
4.身の丈消費で低価格指向 …大衆思考
と名付けている。

1.ブランド志向
心に響くキーワード 最先端・最高級・知る人ぞ知る
心のキャラ像 おしゃれでハイセンスな自分

2.品質志向
心に響くキーワード…新型・定番・目利き・お値打ち価格
心のキャラ像…目利きの自分

3.若者志向
心に響くキーワード…新しい・目立つ・仲間内で目立つ
心のキャラ像…トレンドに敏感で一目置かれる自分

4.大衆思考
心に響くキーワード…有名・便利・安くてお得
心のキャラ像…便利で安くてお得なものを買う自分

男の消費傾向は付き合う女性に対応する。
ただ、断線が好む嗜好品(たばこや酒)やマニアックな趣味用品(バイクや楽器など)
に関しては、心のキャラに応じた消費をせず、男性独特のスペック重視の世界観になる。

先ほど出てきた4つの心のキャラによる分類
(ブランド志向・品質志向・若者志向・大衆思考)のそれぞれはさらに、トレンド系とフォロー系に分けられる。
つまり8つのターゲットの分類ができる。

1.ブランド志向
心に響くキーワード 最先端・最高級・知る人ぞ知る
心のキャラ像 おしゃれでハイセンスな自分

ブランド志向のトレンド系
求めるもの…最先端、最高級、マニアック

ブランド志向のフォロー系
求めるもの…一流、ぜいたく、ワンランク上

2.品質志向
心に響くキーワード…新型・定番・目利き・お値打ち価格
心のキャラ像…目利きの自分

品質志向のトレンド系
求めるもの…本格派、新型

品質志向のフォロー系
求めるもの…定番、お値打ち価格

3.若者志向
心に響くキーワード…新しい・目立つ・仲間内で目立つ
心のキャラ像…トレンドに敏感で一目置かれる自分

若者志向のトレンド
求めるもの…最新トレンド、レアもの、ユニーク

若者志向のフォロー系」
求めるもの…友達も持っている、安い

4.大衆思考
心に響くキーワード…有名・便利・安くてお得
心のキャラ像…便利で安くてお得、なものを買う自分

大衆思考のトレンド系
求めるもの…簡単便利芸能人も使っている

大衆思考のフォロー系
求めるもの…テレビで見た、店頭で目立つ

ターゲットが40代の女性であれば、消費意識と流行感度により
これら8つの商品パターンが生まれる。

どのターゲットを狙ったらいいかわからない場合は、
まず自社の取り巻く環境から考える。
自社のブランド、商品分野、価格帯、販路、店舗の立地
など自社の強みが活かせるターゲットを選ぶ

ヒット商品が成立する4つの要件

1.商品のスペック
イメージ、新しい要素、競合よりも新しい要素、売れ筋の要素など

2.商品の価格
高価格帯…ブランド志向、品質志向
低価格帯…若者志向、大衆思考

さらにそれぞれ、トレンド系、フォロー系に分けれらる

3.販路・販売店舗の立地
自社が持つ販売チャネルの強みによってターゲットが決まる。
トレンド系なら
都市型店舗、ネットで商品購入

フォロー系なら
郊外型店舗、GMS(総合スーパー)、商店街、TV、新聞折り込み通販

4.売り上げ目標
売り上げ目標をどれくらいにするかによって、ターゲットの設定も変わる。

ターゲットグループを販路で決める

消費者は店の種類によって「心のキャラ」が替わる。同じ人でも一般的なスーパーに行けば「

大衆思考」になり、高級スーパーに行けば「ブランド志向」、
自然食品やこだわり食材を置くスーパーに行けば「品質飛行」コンビニに行けば「若者志向になる」

コンセプトとターゲットを販路から考える(化粧品の場合)

都市型百貨店、ブランドショップ、ネット通販、クリニック、サロン販売
→ブランド志向のトレンド系

訴求する内容:最先端の科学

そんなに本格的な商品でない場合は
→ブランド志向のフォロー系
一流、ぜいたく、ワンランク上のイメージやストーリー性を持たせたコンセプトを訴求

テレビ通販
→品質志向のフォロー系
定番、お値打ち価格、商品スペックがそろっていることを訴求

→大衆思考のトレンド系
簡単便利を訴求(例:これ一本でお手入れ完了、○○するだけで~など)

バラエティストア
→若者志向
おしゃれやかわいさを訴求

ドラッグストア
→大衆志向のトレンド系化粧品を買いにくる人

簡単便利、芸能人も使っているといった訴求

→大衆思考のフォロー系
化粧品以外のものもついでに買う人
できるだけ安さを訴求
一目で誰でもわかるようなコンセプト

ヒット商品をつくる技術を磨く5つの習慣

1.心のキャラ分析(日頃であった人の心のキャラを分析)
2.雑誌の見出しコピペネタ帳(自分が手掛ける分野の雑誌のタイトルなどをコピペ)
3.商品パッケージを暗証(商品の表記の仕方を身に着ける)
4.世代特性の研究(世代の特徴をとらえる)
5.初めての商品トレーニング(自分の手掛ける分野の他社商品を初めてコンセプトにあてはめチェックする)

最後に

よくあるマーケティングの解説本などではなく、著者がヒット商品を生み出してきた実務の中で培ってきた内容が語られていて、
分かりやすく勉強になった。

特に心のキャラについては、一人の人間が様々な場面で自分自身の心のキャラクターを変えるというのは、目から鱗だった。

あとターゲットを消費志向と流行感度で分ける方法がとても分かりやすく参考になった。

この書籍では、化粧品を想定した商品企画のやり方が書かれているが、
このやり方は他のジャンルの商品でも応用が利く。

私自身、ある健康食品のビジネスに関わっているが、
このマイクロヒット戦略は十分に使えそうだ。

今商品企画に携わっている人も、そうでない人も、
これから何か作って販売したい人にとっては必見の一冊だと思う。

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